本当に必要!?授業ノートの提出

ICT赤

ノートを取ることが授業の目的になった授業

教師にとって最も大事な授業。その目的は何でしょうか。
答えは色々ありますが、確実に間違っていると言えるのは「ノートを取らせること」が目的のパタです。

授業中に生徒が黒板に書かれた内容をせっせと写している様を見ると、勉強をしている感がひしひしと伝わってきます。

それを見れば「頑張っているな」と思えるのですが、それをよしと思ってはいけません。
なぜなら、授業中に生徒が頑張ったかどうかという項目は学問の定着には一切の関係が無いからです。

生徒がメモを取っている = 授業をちゃんと受けている

という図式が一見成り立つように思えますが、これは大きな勘違いです。

あくまでもノートというのは「生徒のメモ」です。メモは取らないより取った方が良いのは分かりますが、それを目的にしては本末転倒です。

自分の授業がノートを取らせるための授業になっていないかをもう一度確認してみましょう。
これから、そういった授業の問題点と対策法をまとめていきます。

問題点①:授業内でのキャパオーバー

ノートは丁寧に取れているのに成績が思わしくない生徒がいた経験はないでしょうか?

真剣に授業を聞いており、きっちりとノートは取れていて授業中の反応も上々。なのに、テストでは点数が取れず伸び悩む生徒。この問題は私も長い間不思議に思っていました。

様々な要素を考えていくと、理由が浮かび上がってきました。

生徒の成績や授行ノートを見てみると、板書量が多い授業では点が伸びず、板書量が少ない授業では比較的好成績を出していました。

そのことから、板書量が多いとそれに追いつこうと一生懸命にノートを取ることなってキャパオーバーとなり、結果的に授業に集中できていなかったという仮説です。

簡単に言えば、ノート取りに一生懸命になった結果として、本当に必要な情報を聞き逃ししまっていた。ということです。

授業は基本的には1コマ50分です。その中で生徒は以下の流れで授業を受けています。

①板書を見る → ②ノートを取る → ③説明を聞く →①〜③を時間まで繰り返し

もし、教師がノートを取る時間を十分確保せずに解説を行いながらのノートを取るしかないような授業展開では、物凄い負荷が生徒にかかることになります。

一説によると、人間の集中力は15分程度しか続かないと言われています。
そのため、休憩や切り替え無しで延々と授業が続いてしまうと、集中力が途切れてしまうということになります。

少しでも集中力が切れたり、途中で「あれ?ここはどういうことなんだろう?」と疑問を持ってしまったら最後、授業の展開に置き去りにされてしまいます。

こうなるとせっかく質が高く良い授業だったとしても、それを十全に伝えられないことになりますし、生徒はそれを受け取り切れないことになってしまいます。

これは非常に勿体の無いことですし、悲しいことです。

2つ以上のことを同時にやることを一般的にマルチタスクと呼びますが、このマルチタスクの能力は人によって様々で、どうしようもなく向き不向きが決まっています。

私は聴きながらノートを取るという2つのことを同時にやるというのは大の苦手で、聴けば書けなくなるし、書けば聴けなくなってしまいます。

板書と解説で授業は基本的に成り立っていますので、同時に両方の情報を押さえようとすると、結局どちらも中途半端にしか出来ずに、チグハグな情報だけが脳内に残り、より混乱を生んでしまいます。

大人でも厳しいような条件なので、何らかの配慮や解決策を設けるのが最善かもしれません。

問題点②:ノートを取ったら終わり

授業時に取ったノートをどうしていますか?
良くあるのはテスト終了後に回収し、その出来を評価する慣習があるように思います。

これによって一部の生徒はテスト前にテスト勉強が出来なくなります。
ノートを他の人から借りて、ただひたすらノートを写す作業を始めるからです。

ノートを取ることが教師にとっても生徒にとっても目的になったら、授業の価値は激減します。

前述の通り、ノートというのは「生徒のメモ」です。メモの有無で評価が決まることはあってはなりません。

なぜ、そのような評価が今でも行われているのでしょうか。

理由はいくつかあるでしょうが、授業中に居眠りすることを抑制するため、授業態度などを判断する材料にすると基準が明白だから、と生徒のためよりも教師の都合が多分に含まれている気がします。
(※ただし実習や実技系の科目などの成果物を確認する必要がある科目以外)

このやらされている感によって「ノートを完成させる」という気持ちに拍車がかかっているのではないでしょうか。

ノートを作っただけでは大した意味はありません。
ノートというものは、未来の自分がそのノートを見て内容を復習する為にあります。

見返して、内容を確認できなければ意味がありません。公式などを熱心に書いたとしても、それはそもそも教科書に書いてあります。わざわざ時間をかけて写す必要もありません。本当にノートに取るべきことはその公式を「どんな時に使うのか」、「どうやって使うのか」についてです。

公式は知っているけど、どうやって使えば良いのかわからない。公式や方程式のどの記号に何を代入すれば良いのか理解できていないなど、テスト勉強やテスト本番で初めて壁にぶつかるという生徒も少なくありません。

この目的と手段が入れ替わった現状を何とかする必要があるでしょう。

解決策

これらの2点の問題をICT機器を一挙に解決する方法があります。

クラスルームやGoogle Driveを活用して、授業ノートを配信してしまいましょう。
授業はそれをプロジェクターや電子黒板で表示させて授業を行います。

それによって板書は入手することができるので、授業の解説にのみ集中できることになり、集中する項目が絞られることによって、能率は飛躍的に向上することが期待できます。

授業中にそれを生徒が各自の端末で見るかどうかは端末の配備状況や学校の状態で異なりますが、見れるのであればメモを授業中に直接書き込むことによって、板書を写す時間を丸々削減することが可能になります。

ノートも併用する場合は、本文部分以外の気になったことや気付いたことのみをメモするだけで済むようになります。

どちらの場合も、メモの取り方を共有しておくとより良いでしょう。
具体的には「どんな時に使うのか」、「どうやって使うのか」を中心にメモして、「未来(テスト前)の自分が分かるように」ということを意識して書くというのを基本として説明しておくとスムーズです。

副次的な効果として、合理的な配慮にもつながることが考えられます。

生徒の中には、黒板に書いてあることを一旦覚えて、それをノートに写すことが苦手な場合もあります。そういった場合でも、そもそも板書の手間を全て省いてもらえると非常にありがたいと思うでしょう。

また、様々な理由でノートを上手く板書を取れない生徒は、毎回板書を写真に撮る対応をしている学校もありますが、そういった手間も一切必要なくなります。

お互いに余計な手間を省いて効率化していくことが、この忙しい現代社会には適しているのではないでしょうか。何も全てを効率化するべきということではありません。固定観念を捨て、最も教育効果が高く、教師の負担も少ない方向に少しずつ対応を変化させていくことが重要でしょう。

例えば授業ノートの確認もメモ部分のみを見ることになるので、どこに注目しているのか、どんな工夫をしているのかなど、普通のノートの丸写しからは見れないものを見ることが可能になるでしょう。

「いかにやらせるか」よりも「いかに学問の面白さを伝えるか」を重視した指導方法に移行するタイミングなのではないでしょうか。ICT機器が入りつつある現在においてのポイントになってくることは間違いないでしょう。

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