- 授業前準備①年間予定とルールの設定
- 初回授業②シラバスの確認とアンケート実施
- 授業2回目前③班分け
- 授業2回目④テーマ設定 ←今回
- 授業3回目以降⑤探究活動開始
- 7〜8月⑥中間発表/中間評価
- 11〜12月⑥´中間発表/中間評価
- 1〜2月⑦最終発表
- 発表後⑧総括、冊子の作成
テーマを決める前に
探求活動を指導するにあたって、最初であり、最大の壁が「テーマの設定」です。
教師の役割はプレイヤーではなくディレクターです。
生徒の意欲を引き出し、方向性を定めてあげるのが重要です。
しっくりくるテーマを設定できるかどうかが、探究活動がスムーズに進むかどうかの分かれ道です。
そんな重要なテーマ設定ですが、いきなり「探究テーマを決めましょう」と言っても困ってしまいます。そのため、まず第一にテーマを決める前の心構えを共有しておきましょう。
ただ、どんなに理想的なテーマを設定できたとしても必ずしも上手くいくとは限りません。
探究活動はナマモノです。全てが順調に行く訳ではありません。つまずいたり、戻ったりするでしょう。その時に、生徒達がテーマに魅力を感じていなければ、そこで挫けてしまいます。
あくまでも探求するのは生徒達ですので、生徒達の内側から生じる情熱を掻き立てられるようなテーマを一緒に探すことが重要です。また、立ち止まった時に導けるように準備しておくことも心に留めておく必要があるでしょう。
では、どんなことがテーマとして相応しいでしょうか。
様々なジャンルの探究活動がありますが、どんな時でも通用するポイントがあります。
それは、
「報酬が無くても続けられること」
を探究するテーマに据えるということです。
これが、探究活動のテーマを設定する際に重要なことです。
教師から「これをやりなさい」と言われても、本人達にやる気がなければ、ただ体裁を整えて終わりです。時には探究する中で日がつく可能性もゼロではありませんが、実体験としても深い学びは得られにくいです。
そうならないために、そのテーマを探求するにあたって、無償でも探求を続けるだけのモチベーションを保てるかどうかがポイントになってきます。
何の利益がなくても自分の趣味としてその事柄について理解を深めていきたいのか、他の人よりも詳しく詳しい知識を手に入れたいと思うのか思えるのかが重要です。
もしそうではなかったら、どこかで義務感が発生したり、怠けたくなったりしてしまって活動が頓挫することになります。
そのため誰かに指示をされなくても、自分からやりたいと思えるようなテーマを設定することが探究活動においては何よりも意識することです。この条件をクリアできれば、休み時間や放課後などでも時間を惜しんで探究を重ねるほど、のめり込む生徒も出てくるでしょう。
もし、完全に理想とするテーマがなかったとしても、いくつかの候補を提示・列挙させて、その中から最も興味深そうなテーマを、生徒達で選ぶことが重要となるでしょう。
テーマの設定方法
次に本題である具体的なテーマの設定方法についてです。
テーマは文字通り無限に選択肢があります。それを1つ1つ検討していくと時間がいくらあっても足りませんし、迷ってしまっていつまで経っても探究活動が始められません。
そのためにある程度選択肢を縛る必要があります。
まず、前提として【探究活動の指導法②】の『テーマ設定おける条件について』で共有した条件の中であることと、次の2パターンのキーワードから探すのが効果的でしょう。その2つが、
- ポジティブな理由:「好きなこと」、「興味のあること」
- ネガティブな理由:「嫌なこと」、「不満・不便に思っていること」
ということです。
この2つについてそれぞれ解説していきます。
キーワード①「好きなこと」、「興味のあること」
一番わかりやすいのは「好きなこと」、「興味のあること」です。
自分の中で価値があるものをもっと深く知りたい、という欲求に従って探究を進めていきます。
ただ、条件無しで決めて良いものなのか、授業の単元などに関係する分野なのかは最初に確認して共有しましょう。もし、条件がなければ自由に各々の興味関心に忠実になれば良いし、単元などの条件があればその分野の中で最も興味を惹かれるものを探しましょう。
明確なものが決まっている場合は、教師のやることは比較的簡単です。
候補をリストアップして、どんな展望になるのかを一緒に話し合っていけば良いのです。
その中で注意するべきことは、スケジュール管理です。
好きなことはどんどん探究できる可能性が高いですが、あまりにも範囲が広くなるとまとめるのが困難になります。そのため、1つの要素ごとにしっかりと完結されられるようなスケジュールを考えてあげましょう。
例えば、「〇〇は何日までに調べて、分かったことを何日までにまとめましょう」といったように日にちで管理しないと、発表のタイミングになっても下調べしか済んでいなくて、実験や検証の時間がなくなってしまう恐れがあるからです。
一番大事なのは探究者の「ワクワク感」です。
自分の気持ちに正直に向き合いましょう!
ただ、漠然と自分のやりたいことや興味のあることと言われても、なかなかすぐには出てこないかもしれません。
自分の本当に好きなことというのは、中々答えるのが難しいものです。
大人になれば多少は自分のやってきたことが分かっているので、異聞にとって「無難な回答」をすることができます。しかし、「自分の本心」を言語化するのは大人でも難しいことなのです。
今、あなたが1番食べたいものはなんですか?
という質問にどう答えますか?
今食べたいと思ったものを食べに行ったら、「何か違うなぁ」とか「物足りなかった」と感じた事はありませんか?自分のことなら簡単に分かるような気がしますが、実のところ自分のことでさえ完全には分からないものなのかもしれません。
自分はしょっちゅうあります。
もどかしくて、かなしい。
そのため、「やりたいこと」と言われた時に答えられるものは、点数で言えば100点中で60点以上のスコアにはなるでしょう。しかし、100点かどうかは中々わかりません。この時に「自分はこれ!」と言える人は、スムーズに納得のできるテーマ設定ができるでしょう。
しかし、全員が先程の例のように自己分析が完璧なわけはありません。
自分の将来や夢のことを決めると言うのは非常に難しいことです。人間とは他人の事は客観的に評価できても、自分のこととなると客観的に評価するのは難しくなるものです。そのため自分が何に興味があって、何が好きなのかを正しく認識していると言う事は非常に幸運なことだと思います。
では、やりたいこと等が明確ではない人はどうすれば良いでしょうか。
キーワード②「嫌なこと」、「不満・不便に思っていること」
そんな時に考えたいのが自分の周りや世の中で「嫌なこと」、「不満・不便に思っていること」を解決することを目的としたテーマに設定すると良いでしょう。
自分の本当に好きなことや、やりたいことがわからなかったとしても、自分が今嫌なことや困っている事であればいくつか出てくるはずです。
- 朝起きられない。
- 勉強はしたくないけど、テストでは良い点数を取りたい。
- 1日中ゲームをやっていたいのに親に怒られてしまう。
- たくさん欲しいものがあるのにそれを変えるだけのお金がない。
- 自分のコンプレックスをどうにか改善したい。
など、困っていることや不満などはたくさん出てくるのではないでしょうか。困っていることや改善したい事をテーマにすることで自分にとってもプラスになる研究ができるし、世の中の同じ疑問や問題を抱えている人も大勢いるはずです。そんな同じ悩みを共有する人達の力にもなれる研究になるかもしれないと思うと、やる気が湧いてくるかもしれませんね。
そのため、自分のやりたいことや好きなことが具体的にわからないのであれば、逆に自分の嫌なことをやりたくない事からキーワードを見つけてテーマを設定すると、当事者意識が芽生えやすいので設定したテーマに対して探求したいと言う意欲が湧く可能性が高くなってくるでしょう。
もし、悩んでいることさえもなければ「なぜ悩みがないのか」が悩みになります。
キーワードの掘り下げ方
「キーワードは何となく見えてきたけど、具体的にどんなテーマにするればいいのか」という状態になったら、キーワードを掘り下げていきましょう。
この掘り下げをしていく時に意識したいのが、5W1Hです。
よく聞く言葉ですが、Who、What、When、Where、Why、Howで表される5つの項目について考えてみるとより具体化していきます。
例えば、「朝早く起きれない」と言うことをキーワードにして、その解決方法を探る際には、それぞれの単語から連想ゲームをしていきましょう。それが具体的なテーマ設定につながるかもしれません。
- Who:誰が原因となっているのか、誰の寝方が良いのか(有名人やアスリートの生活など)
- What:何で寝ればいいのか(布団、ベッド、畳の違いや枕の影響)
- When:いつ寝れば良いのか、いつまで寝れば十分なのか
- Where:どこで寝れば良いのか(温度・湿度や朝日などの影響)
- Why:なぜ朝起きられないのか、なぜ睡眠が必要なのか
- How:どう寝れば良いのか、効率の良い寝方はないのか、寝なくても済む方法はないのか
このようにただ「朝早く起きれない」という悩みから生じたキーワードから、11個もテーマ案を作成することができました。
ここまで具体的になれば、どんなことを探究すれば良いのかが見えてくるのではないでしょうか。
睡眠の質にまつわる研究や、睡眠の方法やタイミング、寝具や寝る場所、最終的にはなぜ睡眠を取る必要があるのか、など調べれば学術的にも実りのある可能性があるテーマがたくさんあります。人体の本質に迫るような探究活動に繋がるかもしれません。
こういったテーマは、この「朝起きれない」という悩みからでしか得られなかった可能性があります。
もし、キーワードの設定が「寝ることが好きだから」という理由だと見つからなかったものがあるかもしれないからです。例えば、「なぜ寝るのが好きなのか」という出発点からは、「寝なくても済む方法はないのか」といった好きなことを否定するようなテーマ案がそもそも生まれにくいからです。
必ずしも好きなことをキーワードにした方が良いとか、悩みごとをキーワードにした方が良いと言うものはありませんが、次のような傾向が考えられます。
悩みからは解決策に関するテーマが生まれやすく、問題をなくす方法を模索することが多い
好きなことからは発展策が生まれやすく、より良さを発揮できる方法を模索する方法が多い。
あえて、逆の立場からテーマを考えてみても視野が広がって良いかもしれませんね
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